当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)では,不当解雇に関する書類の作成を承っております。
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(1)なぜ,労働基準監督署は解雇の相談に応じてくれないのか?
厳密には,解雇の相談には応じてもらえます。
解雇に対してどういう手段対応があるのかを教えてもらうことはできます。
しかし,労働基準監督署は解雇の有効無効を判断することはできませんので,原則として解雇を撤回しなさいと使用者(経営者)に指導してくれることはありません。
それは,労働基準監督署の権限外だからです(話を簡単にするため,労働基準監督官と労働基準監督署長の権限を区別せずに説明します)。
労働基準監督署は,労働基準法や労働安全衛生法などの法律にしか監督権限がありません。
解雇は,労働契約法に規定があります。解雇予告手当,解雇理由書や退職証明書は,労働基準法に規定があります。
労働基準監督署の監督権限は労働契約法には及びません。
よって,労働基準監督署は,原則として解雇について監督権限を行使することはできません。
労働基準法,男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に違反する疑いのある解雇については,労働基準監督署は監督権限を行使できますが,あくまで,報告を求めることや指導・勧告をすることなどであって,解雇の有効無効を判断することはできません。使用者(経営者)が指導にしたがわなくても,罰則の適用はありません(報告をしない場合や嘘の報告をした場合は罰則(20万円以下の過料)があります)。
労働基準監督署は,解雇本体に対応はできませんが,解雇予告手当の不払いや裁判で解雇を争うための証拠となる解雇理由書・退職証明書の交付拒絶に対しては,権限がありますので,対応してもらえます。
(2)解雇は,労働契約法に規定されています。
労働契約法には,罰則規定がありませんので,労働契約法の条文に違反しても罰則はありません。
したがって,裁判所が解雇が無効と判断した場合でも,使用者(経営者)には,なんらの罰則はありません。
(3)解雇予告手当は,労働基準法に規定がありますので,労働基準監督署は関与することが可能です。
解雇予告手当は,原則として除外認定を受けない限り,解雇予告手当を支払う義務があります。
(例外は,2ヵ月以内の有期労働契約(延長は除く)や試用期間中で就労開始日から14日以内など)。
なお,解雇予告手当の不払いについては,労働基準法119条に罰則の規定(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)があります。
(4)解雇理由証明書・退職証明書は,労働基準法に規定がありますので,労働基準監督署は関与することが可能です。
ただし,労働基準監督署が,使用者(経営者)に解雇予告手当の支払いを強制させることはできませんので,やはり,支払いを強制させるには裁判所に訴える必要があります。
なお,解雇理由証明書・退職証明書の交付拒絶については,労働基準法120条に罰則の規定(30万円以下の罰金)があります。
(5)以上のとおり,労働基準監督署は,使用者(経営者)に対して,労働者の解雇撤回を指導するようなことはありません。
しかし,裁判所は,使用者(経営者)による労働者の解雇について慎重な態度をとっており,懲戒解雇はもとより,普通解雇についても容易には認めません。
とくに,解雇予告手当が不要となるような即時解雇(今日限りでクビだ。)は,よほどのことがない限り,認められることはありません。
衆議院・参議院の厚生労働委員会の付帯決議および厚生労働省の通達も,解雇の訴訟について,原則として使用者側が不利になる取り扱いを肯定しています。
したがって,裁判所で解雇無効の訴訟や労働審判をすれば,労働者の解雇無効が認められる可能性が高く,退職を前提として使用者が解決金を支払う旨の和解が成立することも少なくありません。
一般人の場合は,藁にもすがる思いで労働基準監督署に相談したのに,解雇の有効無効については判断できませんという回答をもらうことにより,心が折れてしまうようです。
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民法
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
衆議院厚生労働委員会
労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成15年6月4日)
一 労働契約の終了が雇用労働者の生活に著しい影響を与えること等を踏まえ、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置及び特段の配慮を行うべきである。
1 本法における解雇ルールの策定については、最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではないとの立法者の意思及び本法の精神の周知徹底に努めること。
参議院厚生労働委員会
労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成15年6月26日)
一 政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
1 本法における解雇ルールの策定については、最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではないとの立法者の意思及び本法の精神の周知徹底に努めること。また、使用者に対し、東洋酸素事件(東京高裁昭和五十四年十月二十九日判決)等整理解雇四要件に関するものを含む裁判例の内容の周知を図ること。
労働基準法
(解雇)
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働契約法の施行について
(平成24年8月10日)
(基発0810第2号)
3 解雇(法第16条関係)
(1) 趣旨
ア 解雇は、労働者に与える影響が大きく、解雇に関する紛争も増大していることから、解雇に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、解雇に際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要がある。
このため、法第16条において、権利濫用に該当する解雇の効力について規定したものであること。
イ これについては、次の裁判例が参考となること(別添)。
○ 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると判示した日本食塩製造事件最高裁判決(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決)
(2) 内容
ア 法第16条は、最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を規定し、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにしたものであること。
なお、法第16条は、法附則第2条による改正前の労働基準法第18条の2と同内容であること。
イ 法附則第2条による改正前の労働基準法第18条の2については、「解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち、圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判実務を何ら変更することなく最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理を法律上明定したもの」であり、「最高裁判所で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではない」ことが立法者の意思であることが明らかにされており、これについては法第16条においても同様であること。
労働契約法
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
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